スタグフレーション
stagflation(スタグフレーション)
スタグフレーション
スタグフレーションとは、インフレ(物価水準の上昇)と景気後退が同時に起こっている状態です。
スタグフレーション(stagflation:景気沈滞下のインフレ)は、スタグネーション(stagnation:沈滞)とインフレーション(inflation)の合成語です。
1970年代に、多くの先進国がスタグフレーションに悩まされました。原油価格の高騰によるインフレと、供給能力の低下による景気後退が同時に発生したことが原因です。
◆スタグフレーションの背景
スタグフレーションは、インフレーションと同様に、超過需要(総需要>総供給)の状態にあるときに起こります。しかし、インフレーションとスタグフレーションでは、総供給の生産能力に違いがあります。
インフレーションは、総供給が完全雇用水準(働きたい人が全員雇用されている状態)を満たす生産能力がある場合に起こります。これは、総需要が完全雇用水準を上回ったためにモノ不足となり、価格が高騰する現象です。したがって、総需要の過剰部分を取り除くと、完全雇用水準で均衡します。
一方、スタグフレーションは、総供給が完全雇用水準を満たす生産能力がない場合に起こります。総供給を完全雇用水準まで引き上げられない状態で、総需要の過剰部分を取り除くと、過少雇用水準で均衡します。これは、景気の後退を意味します。原油や食糧などの供給量を簡単に増やせないところに根本的な原因があります。
◆スタグフレーションの特徴
スタグフレーションのもとで、景気を浮揚させようとして「金利を下げて通貨供給量を増やす」と、さらに物価上昇を推し進めてしまいます。逆に、物価を安定させようとして「金利を上げて通貨供給量を減らす」と、企業の資金繰りが悪くなり、さらに景気後退を推し進めてしまいます。
一方をよくしようとすると、もう一方が悪化してしまうというジレンマ(二重苦)に陥ってしまうのがスタグフレーションの特徴です。したがって、スタグフレーションのもとでは、どのタイミングで通貨供給量を調整するかという金融の舵取りが非常に難しくなります。
◆スタグフレーション対策
スタグフレーション対策には、需要サイドではなく、供給サイドを刺激することが有効だといわれています。インフレを抑え込もうと総需要を抑制すると、景気をさらに悪化させてしまうからです。
供給サイドを刺激する政策には、技術革新や規制緩和により生産性を高めて、民間投資を増やしていく方法があります。しかし、これらの政策は、効果があらわれるまでに時間がかかります。
一方、減税により民間投資を増やす方法は、短期的な利益を追求する企業が多いため、効果があがりにくいのが現状です。
◆急激な円高ドル安
為替レートは円高ドル安が進み、東京外国為替市場では、2008年3月13日に一時99円台をつけました。急激なドル安は、日本経済に深刻な打撃を与えます。
通常、急激な円高ドル安はデフレーション(物価の継続的な下落)を引き起こします。しかし、今回はドルの独歩安であるため、スタグフレーションに陥るのではないかと懸念されています。
金融大学TOP > よくわかる!金融用語辞典 > スタグフレーション