サブプライムローン
低所得者向け高金利住宅ローン(ていしょとくしゃむけこうきんりじゅうたくろーん)
subprime loan(サブプライム・ローン)
サブプライムローン
サブプライムローンは、米国の高金利の住宅ローンで、信用力の低い低所得者を対象としています。
サブプライムローンは、銀行ではなく、住宅ローン会社が扱っている商品です。
≪サブプライムレート≫
サブプライムローンに適用される金利をサブプライムレートといいます。サブプライムレートは、信用力(返済能力)が低い人向けのローン金利です。
一方、銀行融資における最優遇貸出金利をプライムレートといいます。プライムレートは、信用力(返済能力)に問題がない人に適用する金利です。
サブプライムレートは、信用力の低い低所得者が対象のため、プライムレートより高金利になります。
≪サブプライムローンのしくみ≫
サブプライムローンは、融資条件に仕掛けがあります。
サブプライムローンは、借入当初2、3年は、低く抑えられた金利を支払うだけでよく、元本部分の返済はありません。
この期間だけみると、サブプライムは低金利のローンということになります。たいへん融資を受けやすい、好条件のローンと捉えられます。
サブプライムローンは、数年後には、2倍以上の高金利に切り替わります。たとえば、借入当初2年間は8%だった金利支払いが、3年目からは16%にはね上がります。金利支払いが困難になることは、誰の目にも明らかです。
借入当初は低金利 → 数年後には高金利へ
≪なぜサブプライムローンの利用者が増えたのか≫
2001年から2005年の米国の住宅市場は好調で、住宅価格は上昇を続けていました。また、ITバブルの後始末として、低金利政策が続けられていました。そのため、投資動機で家を持つことが、安全な資産運用と考えられました。
サブプライムローンの利用者が急増したのは、「住宅価格が上昇すれば、購入した住宅の担保価値が高まるために、金利の低い一般の住宅ローンに借り換えられる」というシナリオと、貸出審査基準の甘さが顧客の射幸心を駆り立てたためです。
サブプライムローン残高(2006年末)
1兆3千億ドル(約150兆円)
≪証券化によるサブプライムローンの拡大≫
住宅ローン会社は、住宅債権を証券化(資産を有価証券の形にすること)して転売していました。
サブプライムローンの一部には、モノライン(金融保証会社)によって証券に支払保証がつけられ、トリプルAの格付けで安全な有価証券として取引されていました。トリプルAの格付けには最高の信用力があり、サブプライムローン商品は、世界各国に広まっていきました。
この証券化のしくみが、住宅ローン会社の資金調達を容易にし、サブプライムローンの増加に弾みをつけたのです。もし、正しい格付けがされていれば、世界各国の金融機関がサブプライムローン商品に過剰投資するといった現象は起こらなかったでしょう。
≪借り手側からみたサブプライムローン問題≫
米国の代表的な短期金利であるFFレートは、2004年6月から2006年6月にかけて上昇を続けました。このFRBの利上げをきっかけに、米国の住宅価格の上昇が鈍化しはじめ、2006年から下がり始めました。米国の景気を牽引していた住宅ブームが変調をきたし、住宅資産価値が上昇するというシナリオははかなく崩れたのです。
住宅価格が下がると、住宅の担保価値が下がって担保不足となり、住宅担保ローンの借り換えができなくなりました。また、低金利の据え置き期間が終わったローンの支払金利が16%を超えはじめ、金利支払いが困難になりました。こうしてローンの焦げ付きが急増しはじめたのです。
サブプライムローンの借り手は、返済の延滞が続くと、担保の住宅が差し押さえられ、生活基盤を失ってしまいます。
住宅価格の下落 → サブプライムローンの崩壊
≪貸し手側からみたサブプライムローン問題≫
ローンの焦げ付きの急増で、約20社の住宅ローン会社が経営破たんに陥りました。2007年3月には、大手のニューセンチュリー・フィナンシャルが取引銀行から融資打ち切りを通告され、ニューヨーク証券取引所で上場廃止になりました。
ローン会社が倒産に陥ったため、ローン会社へ資金を供給していた銀行は大きな損失を負いました。銀行が倒産してしまうと、金融収縮がおこって、経済は減速しはじめます。
ローン会社の倒産 → サブプライムローンの崩壊
このように、サブプライムローンの焦げ付きが急増し、金融不安をもたらしたことをサブプライムローン問題といいます。金融不安が実物経済の足をひっぱり、景気を減速させるのではないかと懸念されています。
2008年3月3日、米財務省はサブプライムローンによる世界の金融機関の損失が2000億ドル(約20兆6000億円)を越すとの集計を明らかにしました。
このうち、約1000億ドルが米国の金融機関、約750億ドルが欧州の金融機関による損失です。
≪なぜ株安が世界に広がったのか≫
欧米やアジアの金融機関やヘッジファンドは、証券化商品を購入するという形で、住宅ローン会社に資金を貸していました。ところが、住宅ローン会社は、サブプライムローンの焦げ付きの急増により倒産しはじめました。
住宅ローン会社の倒産により損失が発生した金融機関やヘッジファンドは、損失を穴埋めしようとして、保有する株式を売ったため、各国の株式市場で株安が発生しました。
株安が世界に広がったのは、住宅ローン会社の資金調達が証券化により行われ、サブプライムローン商品が世界各国に転売されていたためです。
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