フェデラル・ファンド金利(ふぇでらる・ふぁんどきんり)
federal funds rate(フェデラル・ファンドレート)
FF金利(FFレート)
フェデラル・ファンド金利
フェデラル・ファンド金利(フェデラル・ファンドレート)は、米国の代表的な短期金利で、略してFF金利(FFレート)とも呼んでいます。
FF金利は、フェデラル・ファンドを民間銀行同士で貸し借りする時の利率で、米国の金融政策の誘導目標金利です。
FF金利は、FOMC(連邦公開市場委員会)で決定します。
フェデラル・ファンド
フェデラル・ファンドとは、米国の民間銀行が連邦準備銀行に預けている準備預金のことです。
通常、フェデラル・ファンド(準備預金)は無利息なので、民間銀行は、超過残高分(法定準備預金と決済用準備金を超えて預けられている額)を他行に貸し付けて運用します。このときのレートがFF金利です。
2008年10月、FRBは、金融安定化法案(※)の成立により、フェデラル・ファンド(準備預金)のうち、法定準備預金と超過残高分に関して、それぞれ金利を付与することを決めました。
金利がつくと、民間銀行はその適用金利以下で運用しなくなるため、金融市場調節の誘導目標金利であるFFレートを下支えすることができます。
※2008年10月3日、米下院で、公的資金(最大7000億ドル:約74兆円)で金融機関から不良資産を買い取ることなどを柱とする緊急経済安定化法案(金融安定化法案)の修正案が賛成多数で可決しました。
(参考:連邦準備制度理事会(FRB)/積み立て期間1週間)
FF金利を上げると、市場金利が上がります。
長期金利が上昇すると、債券価格は下がります。
市場金利が上昇すると、企業のコストが増えます。企業収益の悪化が懸念されると、株価は下落します。
逆に、FF金利を下げると、市場金利が下がります。
長期金利が低下すると、債券価格は上がります。
市場金利が低下すると、企業のコストが減ります。企業収益の好転が期待されると、株価は上昇します。
金融政策
米国の中央銀行に相当するFRB(連邦準備制度理事会)は、景気の加熱時や悪化時に、金融市場に資金を供給または吸収することで、金利水準を変更します。
マネーストック(貨幣供給量)を増減させることで、経済活動の勢いを調整します。これを金融政策といいます。
マネーストックを増減させるには…?
政策金利であるFF金利を上げ下げする
景気が過熱すると、継続的な物価上昇(インフレ)が懸念されるため、金融市場への資金供給を減らすことで、景気を抑制します。これを金融引き締めといいます。
逆に、景気が悪化すると、継続的な物価下落(デフレ)が懸念されるため、金融市場への資金供給を増やすことで、景気を刺激します。これを金融緩和といいます。
米国経済の動向と日本への影響
米国経済は、サブプライムローン問題をきっかけに、後退局面に入っています。
2008年12月16日、FRBは、金利を一気に0.0-0.25%に引き下げて、実質ゼロ金利としました。
金融政策(FF金利の上げ下げ)は、銀行間に高い信用が維持されている場合に効果を発揮します。
しかし、銀行間市場に信用収縮が起こっている場合には、銀行は貸し渋りに走るため、金融政策の効果は小さくなります。
今後の金融政策
ゼロ金利の状態から、さらに金利を下げることはできません。
今後、FRBは、市場に資金を直接供給する流動性拡大策をとるとしています。
流動性拡大策(量的緩和)とは、①CP(コマーシャルペーパー)の買い取り、②RMBS(住宅ローン担保証券)の購入、③政府機関債(住宅公社債)の購入、④国債の買い取り などを通して、市場に資金を供給することです。
「国債の買い取り」は、長期金利の低下(国債の価格上昇)を促します。
日本の為替相場への影響
国の信用度が同じであれば、当然、投資家は金利の高い方の国で、資金を運用しようとします。
日本の金利(円)が0.3%で、米国の金利(ドル)が0%であれば、円で運用しようとする動きが起こります。
すると、ドルを売って、円を買うという取引が増えるため、為替レートは、円高ドル安に動きます。
2008年12月17日の東京外国為替市場の円相場(午後5時)は1ドル=88円69-71銭で、前日から1円60銭円高↑・ドル安↓に動きました。
日本の株価への影響
日本経済は、輸出に依存しています。
為替レートが円高に推移すると、円貨での輸出額が減少して、自動車や家電製品の企業業績を悪化させます。
円高は、原油や原材料を輸入する企業にはプラスに働きますが、全体でみると、経済にはマイナスに働きます。
FF金利の推移と米国経済の背景
(FAA調査部作成)
FF金利のその後の推移
- 2017年6月14日、FRBはFOMC(米連邦公開市場委員会)で、FF金利を1.00-1.25%に引き上げることを決めました。
- 2017年12月13日、FRBはFOMC(米連邦公開市場委員会)で、FF金利を1.25-1.50%に引き上げることを決めました。
- 2018年3月21日、FRBはFOMC(米連邦公開市場委員会)で、FF金利を1.50-1.75%に引き上げることを決めました。
- 2018年6月13日、FRBはFOMC(米連邦公開市場委員会)で、FF金利を1.75-2.00%に引き上げることを決めました。
- 2018年9月26日、FRBはFOMC(米連邦公開市場委員会)で、FF金利を2.00-2.25%に引き上げることを決めました。
- 2018年12月19日、FRBはFOMC(米連邦公開市場委員会)で、FF金利を2.25-2.50%に引き上げることを決めました。
- 2019年7月31日、FRBはFOMC(米連邦公開市場委員会)で、FF金利を2.00-2.25%に引き下げることを決めました。
- 2019年9月18日、FRBはFOMC(米連邦公開市場委員会)で、FF金利を1.75-2.00%に引き下げることを決めました。
- 2019年10月30日、FRBはFOMC(米連邦公開市場委員会)で、FF金利を1.50-1.75%に引き下げることを決めました。
- 2020年3月3日、FRBはFOMC(米連邦公開市場委員会)で、FF金利を1.00-1.25%に引き下げることを決めました。
- 2020年3月15日、FRBはFOMC(米連邦公開市場委員会)で、FF金利を0.00-0.25%に引き下げることを決めました。事実上のゼロ金利政策の実施は、約4年3か月ぶりです。
- 2022年3月16日、FRBはFOMC(米連邦公開市場委員会)で、事実上のゼロ金利政策(2020年3月導入)を解除し、FF金利を0.25-0.50%に引き上げることを決めました。
- 2022年5月4日、FRBはFOMC(米連邦公開市場委員会)で、FF金利を0.75-1.00%に引き上げることを決めました。
- 2022年6月15日、FRBはFOMC(米連邦公開市場委員会)で、FF金利を1.50-1.75%に引き上げることを決めました。
- 2022年7月27日、FRBはFOMC(米連邦公開市場委員会)で、FF金利を2.25-2.50%に引き上げることを決めました。
- 2022年9月21日、FRBはFOMC(米連邦公開市場委員会)で、FF金利を3.00-3.25%に引き上げることを決めました。
- 2022年11月2日、FRBはFOMC(米連邦公開市場委員会)で、FF金利を3.75-4.00%に引き上げることを決めました。
- 2022年12月14日、FRBはFOMC(米連邦公開市場委員会)で、FF金利を4.25-4.50%に引き上げることを決めました。
- 2023年2月1日、FRBはFOMC(米連邦公開市場委員会)で、FF金利を4.50-4.75%に引き上げることを決めました。
- 2023年3月22日、FRBはFOMC(米連邦公開市場委員会)で、FF金利を4.75-5.00%に引き上げることを決めました。
- 2023年5月3日、FRBはFOMC(米連邦公開市場委員会)で、FF金利を5.00-5.25%に引き上げることを決めました。
- 2023年7月26日、FRBはFOMC(米連邦公開市場委員会)で、FF金利を5.25-5.50%に引き上げることを決めました。
- 2024年9月18日、FRBはFOMC(米連邦公開市場委員会)で、FF金利を4.75-5.00%に引き下げることを決めました。
- 2024年11月7日、FRBはFOMC(米連邦公開市場委員会)で、FF金利を4.50-4.75%に引き下げることを決めました。
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