信用創造(しんようそうぞう)
credit creation(クレジット・クリエーション)
信用創造
信用創造とは、銀行が預金と貸し出しを連鎖的に繰り返すことで、お金(預金通貨)が増えていくしくみをいいます。
≪信用創造のしくみ≫
銀行は、預金という形で大勢の預金者からお金を預かり、預金者がいつでも預金を払い戻せるように、現金を用意しています。預金者の中には、預金をすぐに払い戻す人もいれば、長期間預けておく人もいます。預金者全員がすぐに預金を払い戻すことはまずないので、銀行は預金の全額を現金で用意しておく必要はありません。預金の一部を支払準備として現金で手元に置いておき、残りの預金を企業への貸付に回すことができます。
企業に貸し出されたお金は、取引先の支払いにあてられます。支払いを受けた取引先は、このお金をすぐに使うあてがなければ、銀行に預けることになります。銀行は、支払準備分を手元に残して、残りをまた貸し出しに回します。これを繰り返すと、預金通貨というお金が新しく生み出され、銀行全体の預金残高は、どんどん増えていきます。これを「信用創造」と呼んでいます。
預金者から現金で銀行に預けられる最初の預金のことを本源的預金といいます。本源的預金は、信用創造の基礎となるお金です。本源的預金をもとに信用創造されたお金のことを派生的預金といいます。
銀行は、預金者が預金を払い戻す場合を想定して、預金の一定割合の現金を手元に置いておく(日本銀行に預ける)ことが義務づけられています。この準備金のことを法定準備預金といい、預金に対する法定準備預金の割合のことを法定準備率といいます。
≪信用創造の計算≫
銀行が、預金者から100円を預かったとします。法定準備率を10%とすると、10円だけを現金で銀行に残し、残りの90円(元本の90%)をA企業に貸付けることができます。A企業は、銀行から借りたお金で、取引先であるB企業に支払いをします。B企業はそのお金を銀行に預け、銀行にはB企業の預金90円が新たに作られます。銀行は、90円の90%である81円をC企業に貸付けます。そしてC企業よりD企業に渡り、再び銀行に預金されます。銀行では81円の90%をE企業に貸付けることになります。
このように、お金が銀行と企業の間を循環することによって、銀行の預金通貨はどんどん増えていきます。これが信用創造です。現金通貨が、数倍の預金通貨に生まれ変わります。
たとえば、最初の預金100円、法定準備率10%なら、90円が銀行から貸し出されます。その場合、預金通貨は10倍に膨らみます。
最初の銀行に100円を預金し、次の銀行に90円、その次の銀行に81円…。これをずっと合計していくと、預金は、100+90+81+72.9+65.61+59.049…=1000円になるのです。
この信用創造のしくみは、景気刺激策の効果を考えるのに、とても役立ちます。新たに発行する10兆円のお金が、100兆円のお金の役割を果たすかもしれないからです。
※信用創造によって預金が「いくらに増えるのか」、または「何倍に膨らむのか」という計算は、無限等比級数の公式を利用すると簡単に計算できます。
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