よくわかる!金融用語辞典 【マイナス金利政策】

マイナス金利政策

マイナス金利政策(まいなすきんりせいさく)
negative interest rates policy(ネガティブ・インタレスト・レートツ・ポリシー)

マイナス金利政策

導入の目的は?

 

日本銀行の金融政策の目的は、「物価上昇率2%(消費者物価の前年比2%)」(※)の目標実現と、早期の「デフレ脱却」を目指すことです。

 

(※)物価上昇率2%の目標達成時期は、「2016年度後半」から「2017年度前半」に先送りされました。

 

そこで、金融緩和をさらに強化するために、「マイナス金利」を導入しました。

 

 

マイナス金利の導入は、「利下げ」です。利下げには、3つの狙いがあります。

 

① 企業の設備投資を増やしたい
② 為替レートを円安に誘導したい
③ リスク資産への投資を増やしたい(資産効果)

 

① 企業の設備投資を増やしたい

 

2013年4月に「量的・質的金融緩和」が導入されて以降、日本銀行の当座預金残高は急増しています。これは、日本銀行が“民間銀行から国債を買い入れ、その代金を支払う”という金融緩和策を行った結果、積みあがったお金です。

 

これまで、余剰資金分に0.1%の金利が付いていたこともあり、個人や企業に貸し出されず、残高として増え続けてきたのです。

 

マイナス金利政策

 

しかし、「マイナス金利政策」が導入されたことで、日本銀行の当座預金に余剰資金を置いておくと、民間銀行は金利を支払わなければいけません。

 

すると、民間銀行は、余剰資金を企業に貸し出そうとするので、金利が下がります。金利が下がると、企業は、採算がとれる事業計画を立てて、設備投資を増やすことができます。
企業の設備投資(需要)を促進して、経済の好循環を作り、物価上昇率2%を達成させます。アベノミクスでは、GDP600兆円の実現を目指しています。

 

経済の好循環とは…
投資↑→ 賃金↑→ 消費↑→ 物価↑→ 企業収益↑→ 雇用↑ → 消費↑ のことです。

 

要するに、 投資↑ → GDP↑・物価↑ を実現させます。

 

このように、マイナス金利政策の直接の目的は、民間銀行に滞留している余剰資金を企業への貸し出しに回すように仕向けることです。

 

しかし、大手企業の手元資金は潤沢である一方、中小企業への貸付には大きなリスクを伴います。自らリスクを取りたくない民間銀行は、一般顧客(個人)の預金金利を引き下げることで収益を確保するのでは…と懸念されています。

 

したがって、①の効果はあまり期待されていません。

 

② 為替レートを円安に誘導したい

 

利下げをすると、日米間の金利差は拡大します。すると、円売り・ドル買いの裁定取引(市場間格差を利用して、リスクなく利益を得る取引)が増えるため、円安になります。

 

円安は、輸出企業の収益を向上させ、その関連企業の株価を上昇させます。その結果、円安・株高による経済の好循環を作ります。

 

マイナス金利政策

 

③ リスク資産への投資を増やしたい(資産効果)

 

民間銀行の金利が下がると、個人や企業は預金するのをやめて、リスク資産(株、ETF、外債、REIT等)へ資金をシフトさせます。

 

マイナス金利政策によって、これらのリスク資産の価値が上がると、消費や投資が活発になります。これを資産効果といいます。

 

導入の結果は?

 

今回のマイナス金利政策は、市場にはサプライズとなり、導入から2日間(1月29日~2月1日)は、一時的に円安・株高の流れを作りました。

 

マイナス金利政策
(日銀による「マイナス金利」の発表は、2016年1月29日(金)午後0時40分でした)

 

しかし、世界経済の減速懸念や原油価格の下落などから、一気に円高・株安の流れへと変わりました。

 

長期金利(新発10年物国債利回り)では、2月9日に初めてマイナスを付けました。「マイナス」は世界的にも異例で、スイスに次いで2例目となります。

 

マイナス金利政策

 

2月15日には、逆に円安・株高に流れました。2月16日にマイナス金利が導入された後、市場はどのように動いていくのでしょうか。景気回復の効果が期待されます。

 

日銀がマイナス金利を解除

 

2024年3月19日、日銀は、金融政策決定会合で、マイナス金利政策を解除することを決めました。政策金利は「無担保コール翌日物金利を0~0.1%程度で推移するよう促す」としました。

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