抵当証券(ていとうしょうけん)
mortgage backed security(モーゲージ・バックト・セキュリティ)
MBS

抵当証券

不動産を担保とした貸付債権を証券化して、小口販売する金融商品

 

抵当証券とは、主に中小企業者や個人事業主向けの不動産を担保(抵当)とした貸付債権を証券化して、一般投資家に小口販売する金融商品です。1931年の抵当証券法に基づいて発行されています。

 

抵当証券の販売は、抵当証券会社が行います。抵当証券会社は、内閣総理大臣の登録を受けた法人です。預入期間や金利、解約手数料などについては、抵当証券会社によって条件が異なるので、購入の際に確認する必要があります。

 

抵当証券は、債務者(中小企業者や個人事業主)の同意を得て登記申請を行い、法務局(登記所)から交付されます。抵当証券会社は、交付された抵当証券の原券を抵当証券保管機構に預けることが義務づけられています。抵当証券保管機構は、原券を預かると保管証を発行します。

 

抵当証券会社は、抵当証券を小口化して、一般投資家に販売します。購入者は、抵当証券保管機構が発行する保管証と、抵当証券会社が発行する取引証(モーゲージ証書)を受取ります。
抵当証券会社は、債務者が定期的に支払う返済金の中から、購入者に元利金を支払います。

 

抵当証券

 

抵当証券の元利金の支払は、抵当証券会社が保証しています。国は保証しません。債務者が倒産した場合には抵当証券会社が元利金を保証しますが、抵当証券会社が倒産・廃業となった場合には元利金は保証されません。

 

抵当証券

 

抵当証券会社が倒産・廃業した場合には、抵当証券保管機構が担保不動産を競売にかけて購入者に分配します。しかし、不動産の価値が下落するなどして、十分な価格で売却できない場合には、元利金は全額支払われません。リスクは購入者が負うことになります。

 

抵当証券は、抵当証券会社、銀行、信用金庫・信用組合、保険会社、証券会社などで取り扱っています。銀行などの金融機関の窓口で購入できますが、銀行が販売している金融商品ではありません。抵当証券会社が販売している金融商品です。したがって、預金保険制度の保護は受けられません。
※預金保険制度とは、金融機関が破たんした場合に、元本1000万円とその利子を限度額として預金者に払い戻す保護制度です。

 

抵当証券の利回りは、銀行などの預貯金よりも高く設定されることが多く、購入者には魅力的な金融商品と捉えられるようです。しかし、販売している抵当証券会社が倒産・廃業した場合には、元利金は保証されません。したがって、信用度が高く、経営状態の安定した抵当証券会社を選ぶことが重要です。

 

米国に、MBS(モーゲージ・バックト・セキュリティ)と呼ばれる、抵当証券に類似した金融商品があります。これは、1970年代に住宅ローン債権を証券化する手法として誕生したもので、ABS(資産担保証券)という証券化手法へ発展していきました。

 

日本でABSの発行が認められたのは、1998年(SPC法施行)のことです。日本に古くからある抵当証券とMBSを区別するために、MBSをモーゲージ担保証券と訳しています。MBSは、GNMA(政府抵当金庫)による政府の保証が付いていることや、投資家への情報開示の規定が整っている点などにおいて、日本の抵当証券と大きく異なっています。

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