よくわかる!金融用語辞典 【EB債(他社株転換債)】

EB債(他社株転換債)

EB債(イービーさい)
他社株転換債(たしゃかぶてんかんしゃさい)
exchangeable bond(エクスチェンジャブル・ボンド)

EB債(他社株転換債)

特定銘柄の株式の値動きに連動して、償還条件が変わる債券
満期日の株価が設定水準より高い場合…元本+金利
満期日の株価が設定水準より低い場合…株式+金利

 

他社株転換債は、特定銘柄の株式の値動きに連動して、償還条件が変わる債券です。
Exchangeable Bond (エクスチェンジャブル・ボンド)を略して、EB債といいます。1998年の証券取引法改正により、販売が開始されました。

 

EB債は、償還条件に特徴があります。そのため、通常の債券よりクーポンレートを高く設定してあります。高利回りの金融商品です。

 

特定の上場銘柄株を対象に選び、満期日に、その株価が設定水準より高い場合には、元本と高い利息が現金で償還されます。しかし、株価が設定水準より低い場合には、元本は得られず、かわりに、対象となった株式で償還されます。

 

EB債(他社株転換債)

 

普通の債券は、満期日に「額面+金利」が償還されます。EB債は、対象銘柄株が設定水準より下がると、満期日に「株式+金利」が償還されます。
償還後、株式は売却可能となりますが、その後も株価が値上がりしない場合には、株の値下がりリスク(元本割れ)を負うことになります。株価が下がるほど、損失は拡大します。
逆に、株価が設定水準より大幅に高くなった場合でも、償還されるのは「元本+金利」だけなので、利益は常に一定です。

 

EB債は、デリバティブ(金融派生商品)の仕組みを応用しています。通常の債券に株式オプションを組み込んだ仕組み金融商品です。「債券+プットオプションの売り」を組み合わせています。債券の発行者(金融機関)がプットオプションの買い手で、投資家がプットオプションの売り手です。

 

例えば、ソニーの個別株式オプションを組み入れたとします。
株式の行使価格が10,000円の場合、金融機関は債券を発行して、投資家から10,000円を受取ります。クーポンレートを5%に設定するとします。通常のクーポンレートの相場水準が2%であるときにも、オプションのプレミアム料を3%上乗せすることで5%という高利回りを実現します。

 

オプション行使日の株価が、募集時に決定された行使価格10,000円以上であった場合、金融機関はオプションを放棄します。つまり、投資家は、「元本+金利」を受取ることになります。

 

EB債(他社株転換債)

 

株価が10,000円以下であった場合(例えば7000円)は、金融機関は、市場でソニーの株式を7000円で購入し、オプションを行使してその株式を10,000円で投資家に売却します。金融機関は10,000円-7000円=3000円の利益を取得し、投資家は時価7000円の株式を取得します。つまり、投資家は、「株式+金利」を受取ることになります。

 

EB債(他社株転換債)

 

高利回りが魅力のEB債は、投資家の間で人気が上昇し、証券会社も積極的に販売を行いました。
しかし、一部の証券会社は、対象銘柄の株式を満期日に大量に売って株価を意図的に引き下げたり、販売時の株価が設定水準より低いEB債を投資家に説明せずに販売したりしました。
損失を被った投資家から苦情が寄せられ、証券取引等監視委員会が調査を行った結果、一部の証券会社の不正行為が発覚し、数社が処分を受けました。

 

EB債は、債券にオプションが組み込まれているために、個人投資家にはリスクが見えません。 投資家がオプションの売り手であることが、この金融商品の問題点となっています。

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