関税と貿易に関する一般協定(かんぜいとぼうえきにかんするいっぱんきょうてい)
General Agreement on Tariffs and Trade(ジェネラル・アグリーメント・オン・タリフス・アンド・トレード)
世界貿易機関(せかいぼうえききかん)
World Trade Organization(ワールド・トレード・オーガニゼーション)
GATTからWTOへ
GATT…関税と貿易に関する一般協定(1948~1995年)
WTO…世界貿易機関(1995年~)
≪GATT≫
ガット(GATT:General Agreement on Tariffs and Trade)は、関税と貿易に関する一般協定です。無差別で自由な貿易を目指し、貿易基準を定め、加盟国間の貿易紛争処理を行います。本部はスイスのジュネーブにあります。日本は、1955年にGATTに加盟しました。
1944年7月、連合国44カ国が、米国のニューハンプシャー州ブレトンウッズに集まり、第二次世界大戦の通貨制度などに関する会議が開かれ、国際通貨基金(IMF)、国際復興開発銀行(IBRD:世界銀行)、GATT(関税・貿易に関する一般協定)が創設されました。これを、ブレトンウッズ協定といいます。
GATTは、1947年のジュネーブ貿易会議で23カ国が調印し、1948年1月に発効しました。当初、ITO(国際貿易機構)が創設される予定でしたが、アメリカ議会に反対されたため、一般協定という形でGATTが創設されました。GATTは正式な国際機関ではなく、その機能は統制力が弱いものでした。
GATTでは、世界経済の発展のために、無差別で自由な貿易を行えるよう、関税や輸出入制限などの貿易障害の撤廃を目的としていました。国際貿易問題の交渉は、各ラウンドごとに進められました。ラウンドとは、加盟国が集まって貿易問題の検討を行う場のことで、GATTでは8回行われました。
1960~1961年にはディロン・ラウンド(第5回)、1964~1967年にはケネディ・ラウンド(第6回)、1973~1979年には東京ラウンド(第7回)、1986~1994年にはウルグアイ・ラウンド(第8回)が開かれました。ウルグアイ・ラウンドでは、貿易に関する交渉に加えて、GATTにかわる機関としてWTO(世界貿易機関)の設立が決まりました。
GATTの役割はWTOに引継がれ、GATTは、1995年末に廃止となりました。
≪WTO≫
世界貿易機関(WTO:World Trade Organization)は、1994年マラケシュ会議で合意され、1995年に設立しました。GATTの機能を増強したもので、無差別で自由な貿易を促進するための国際機関です。本部はスイスのジュネーブにあります。
加盟国・地域は、148カ国(2003年10月現在)となりました。事務局長の任期は3年で、2002年9月からはスパチャイ元タイ副首相(前任者はマイク・ムーア元ニュージーランド首相)です。
GATTとWTOには、いくつかの相違点があります。
GATTが協定であったのに対し、WTOは機関であるため、より強い統制力を持てるようになりました。また、GATTでは物品に関する貿易だけが対象でしたが、WTOでは知的所有権やサービスに関する貿易も対象となりました。そして、ルール違反を行った国に対する罰則は、GATTでは全加盟国が賛成しない限り実施できないコンセンサス方式を採用していましたが、WTOでは全加盟国が反対しない限り実施できるネガティブ・コンセンサス方式を採用しました。
閣僚会議は、WTOの最高意思決定機関です。少なくとも2年に1回は開催されます。
1999年12月、アメリカのシアトルで第3回閣僚会議が開かれましたが、先進国の交渉内容に対する開発途上国の反発などから会議は決裂し、新ラウンドの立ち上げはできませんでした。
2001年11月、カタールのドーハで第4回閣僚会議が開かれ、中国と台湾の加盟を正式に承認しました。中国は143番目、台湾は144番目の加盟国・地域となりました。また、新多角的貿易交渉(新ラウンド)の開始を盛り込んだ閣僚宣言を採択しました。
2003年9月、メキシコのカンクンで第5回閣僚会議が開かれましたが、新ラウンドに関する進展はありませんでした。また、ネパールとカンボジアの加盟により148加盟国・地域となりました。
第6回閣僚会議は、2005年12月に香港で開かれる予定です。
≪新多角的貿易交渉(新ラウンド)≫
2002年1月28日、世界貿易機関(WTO)は、貿易交渉委員会(TNC)の初会合をジュネーブで開催しました。新ラウンドの交渉期限は2005年1月1日です。
貿易交渉委員会(TNC)は、カタールのドーハで行われた第4回閣僚会議で設置が合意されました。TNCでは、各分野ごとに交渉グループを設置します。
TNCの議長には、マイク・ムーアWTO事務局長が選出されました。
議長選出にあたり、マイク・ムーアWTO事務局長を推薦する主要先進国(日本、米国、欧州連合など)に対し、一部の途上国(パキスタン、エジプトなど)は、交渉が先進国に有利になるとして反対していました。途上国側は、各国の議長持ち回り方式を主張していましたが、交渉の進行ルールを文書化することで理解を示し、2月1日に再開された初会合で、マイク・ムーアWTO事務局長のTNC議長就任が決定しました。
マイク・ムーア元ニュージーランド首相は、2002年8月末にWTO事務局長の任期を終了し、9月からは、スパチャイ元タイ副首相がWTO事務局長に就任し、TNC議長も引き継ぐことになります。
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