銀行等保有株式取得機構(ぎんこうとうほゆうかぶしきしゅとくきこう)
Banks' Shareholdings Purchase Corporation(バンクス・シェアホールディングズ・パーチェス・コーポレーション)
銀行等保有株式取得機構
銀行の持ち合い株解消の受け皿機構
銀行等保有株式取得機構は、銀行の持ち合い株を解消するための受け皿機構で、2002(平成14)年1月30日に設立し、2月中旬から買取業務を開始しました。
銀行が保有する持ち合い株を、市場を通さずに時価で買い取り、時間をかけて市場に放出していきます。
≪設立の経緯≫
2002(平成14)年3月期の決算から、保有株式の時価評価が義務付けられました。現状のままでは、株価の下落が銀行の資産を減らし、経営状態を悪化させてしまいます。そのため、銀行は持ち合い株の売却を進めていますが、大量の持ち合い株が市場に流れると、株価下落の原因になります。そこで、銀行の持ち合い株解消の受け皿として、機構の創設が必要になりました。
2001(平成13)年4月6日、政府・与党の緊急経済対策に機構の創設が盛り込まれました。2001(平成13)年11月21日には、株式の保有制限導入と機構の設立を柱とする、銀行株式保有制限法が成立しました。
≪拠出金≫
機構は、会員(銀行・農林中央金庫・信金中央金庫)からの拠出金によって設立・運営されます。運営を行う役職員は、銀行界から選出されます。
◆当初拠出金(優先拠出金)と劣後拠出金
拠出金には、当初拠出金(優先拠出金)と劣後拠出金があります。
当初拠出金(優先拠出金)
当初拠出金(優先拠出金)は、機構の運営経費として会員に拠出してもらう資金です。
2001(平成13)年12月、当初拠出金の出資構成が決まりました。4大銀行グループ(三菱東京、みずほ、UFJ、三井住友)が各20億円ずつ、あさひ、大和、住友信託、中央三井信託が各3億~7億円ずつ出資(大手14行で98億円)、それに農林中央金庫、信金中央金庫、地方銀行などが加わり、計128金融機関で総額107億円となりました。会員は、拠出額の200倍までの株式を機構に売却することができます。
劣後拠出金
劣後拠出金は、会員が機構に株式を売却する際に、その売却額の8%を会員に拠出してもらう資金です。
しかし、2003(平成15)年8月30日に銀行株式保有制限法の第2次改正法が施行され、売却額の8%を拠出する制度は廃止されました。
≪株式買い取り≫
機構の株式買い取りは、会員の任意によって行われます。買取期間は2006(平成18)年9月30日までで、買取価格は時価となります。買い取った株式は、信託銀行に管理が委託され、市場で時間をかけて個人投資家や機関投資家に売却されます。
会員は、2001(平成13)年3月31日時点に保有していた株式数を超えて、機構に株式の買い取りを希望(申し込み)することはできません。
◆株式等の保有制限
銀行経営が株価下落により左右されないようにする目的で、2006(平成18)年9月末から、銀行の株式保有額は、自己資本の範囲内に制限されます。
※2003(平成15)年8月30日に施行された銀行株式保有制限法の第2次改正法により、銀行の保有株式を自己資本の範囲内に制限する期限は、これまでの2004(平成16)年9月末から、2006(平成18)年9月末に延長されました。
≪解散≫
機構は、株式買取期間は5年、存続期間は最長15年ですが、機構が買い取った株式を全て売却し終えた時点で、速やかに解散となります。
※2003(平成15)年8月30日に施行された銀行株式保有制限法の第2次改正法により、機構の存続期間は、これまでの最長10年から、最長15年(2017(平成29)年3月31日まで)に延期されました。
機構の創設に関して、「銀行だけを救済し、優遇している」「政府の介入が市場をゆがめる」「株価変動のリスクを公的資金に頼るのは問題」などのさまざまな反対意見もありました。しかし、機構が銀行の持ち合い株解消の受け皿となり、株式市場に影響を与えず銀行経営を安定させることで、景気回復につながると期待されています。
◆補足
2001(平成13)年3月末時点で、銀行(大手14行)の保有株式の簿価は32兆6492億円で、自己資本21兆7724億円より、10兆8768億円ほど上回っています。
(下記数字は、簿価ベース、2001年9月末現在をもとに作成)
※さくらと住友は、2001(平成13)年4月1日に合併し、三井住友銀行となりました。
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