特別検査(とくべつけんさ)
special inspections(スペシャル・インスペクションズ)
特別検査(2003年3月期)
金融庁が、大口債務者に対する大手銀行の自己査定を検証するもの
特別検査とは、金融庁が、大口債務者(融資先企業)に対する大手銀行の自己査定を検証するものです。
2002(平成14)年10月の金融再生プログラムに、「平成15年3月期について、リアルタイムの債務者区分の厳格な検証を継続する形で、特別検査の実質的な再実施を行う」として、特別検査の再実施が盛り込まれました。
≪検査の概要≫(金融庁の公表資料より作成)
◆日程
特別検査は、2003(平成15)年1月27日に着手し、4月25日に検査結果を公表しました。
◆対象銀行:主要11行
対象銀行は、三井住友銀行、住友信託銀行、中央三井信託銀行、みずほ銀行、みずほコーポレート銀行、みずほ信託銀行、東京三菱銀行、三菱信託銀行、UFJ銀行、UFJ信託銀行、りそな銀行の11行です。
◆対象債務者:167社
特別検査では、167社(与信額14.4兆円)を対象に検査を行いました。対象となるのは、市場の評価(株価や格付けなど)が大幅に低下した大口債務者です。
≪検査の結果≫
2003(平成15)年4月25日、金融庁は特別検査の結果として、全業種(167社)を対象とした数値と、不良債権が特に目立つ4業種(116社)を対象とした数値を公表しました。
※下位遷移…銀行の自己査定(2002年9月期中間決算時)より、査定を引き下げられた債務者
※破綻懸念先以下…破たん懸念先、実質破たん先、破たん先に引き下げられた債務者
※4業種…建設業、不動産業、卸小売業、その他金融業のこと
◆不良債権処分損
※引当金残高…2003年3月期末は、2002年9月期末(1.7兆円)+0.5兆円の2.2兆円
※直接償却…不良債権を帳簿から切り離してオフバランス化すること
銀行の債権放棄、法的整理(会社更正法の適用)、債権の売却 の3つの方法がある
≪DCF方式の導入≫
金融庁は、要管理先に分類された大口債務者(融資先)に対する大手銀行の資産査定方法として、DCF(ディスカウント・キャッシュ・フロー)方式を2003年3月期から適用しました。
ディスカウント・キャッシュ・フロー(割引現在価値:DCF)方式とは、融資先企業の将来の収益から、回収不能になるリスクを差し引いて算出された「債権の現在価値」と、「債権の帳簿価格」との差額を引当金として計上する方法です。
2002(平成14)年10月の金融再生プログラムに、「主要行において要管理先の大口債務者については、DCF方式を基礎とした個別的引当を原則とし、早急に具体的手法を検討する」として、引当に関するDCF的手法の採用が盛り込まれました。
DCF方式は、米国で主流となっていて通常は債権ごとに適用されますが、日本では企業ごとの適用が認められています。
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