連立方程式(れんりつほうていしき)
simultaneous equations(サイマルテーナス・イコージョン)
連立方程式の計算
原資産をオプションでヘッジして、安全資産を作る式を考える
オプション価格は、連立方程式を使って計算することができます。
連立方程式は、XやYという代数を使って計算するもので、代数方程式ともいいます。数学の教科書で馴染みのある等式で、一組の等式で表現されることから、一般に連立方程式といいます。
連立方程式は、1時間とか1日といった短期間の変化を等式で表現したもので、これを使って解く計算方法を数値計算法と呼んでいます。
≪オプション価格の計算≫
オプション価格は、売り手・買い手の双方が納得のいく価格(均衡価格)で、リターンやリスクを考慮して決められます。オプションの売り手は、買い手からもらうオプション料と銀行からの借入金で、原資産を購入してヘッジします。
オプション価格や原資産価格は、将来いくらになるか決まっていない変数です。一方、銀行からの借入金は金利が確定しているため、計算式では定数として使うことができます。そこで、借入金(負の安全資産)の動きが確定していることを利用して、オプション価格を計算します。
これは、ヘッジすることによって、危険資産(オプションや原資産)の不確定要素(確率的に変動する部分)を消し去って、確定部分だけにしてオプション計算するものです。
◆計算式
オプション価格を計算するためには、原資産(株式など)をオプションでヘッジして、安全資産(預金や満期所有の債券などの非危険資産)を作る式を考えます。すると下記のような式になります。
ここで、原資産価格が、(1)将来(翌日)は120円に上がる、(2)将来(翌日)は80円に下がる、のどちらかに変動すると予測します。安全金利は0%(年率)、期間は0.00274年(1年を365日とした場合:1÷365≒0.00274)とします。
オプション価格は満期日(翌日)の原資産価格と行使価格の差額で決まりますから、行使価格を100円とすると、1日後のオプション価格は20円(120-100=20)、または0円(行使しない)となります。すると、Δ(ヘッジ比率)とB(借入金)を変数とする、期間1日の安全資産の動きを表わす連立方程式がつくられます。
この連立方程式を解くと、Δ=0.5、B=40と計算されます。
現在の原資産価格が100円であった場合には、0.5×100-C=40という方程式が成り立つので、C=10となります。オプションの売り手は、買い手からオプション料10円をもらいます。
原資産価格が120円に上がると、満期日(翌日)のオプション価格と借入金は、それぞれ、C=20(120-100=20)、B=40(0.5×120-20=40)となります。0.5単位の原資産(価格60円)は、オプションの買い手に支払うオプション料20円と、借入金の返済額40円に充てられます。
原資産価格が80円に下がると、満期日(翌日)のオプション価格と借入金は、それぞれ、C=0(オプション放棄)、B=40(0.5×80-0=40)となります。オプションは行使されないので、0.5単位の原資産(価格40円)は、借入金の返済額40円のみに充てられます。
◆Δ(デルタ)…最適ヘッジ比率
この連立方程式は、原資産価格が120円か80円の2つしかない場合、原資産を0.5単位持っていれば、オプションを保有するのと同じキャッシュ・フローが複製できることを示しています。
0.5単位の原資産=1単位のオプションなのですから、オプションのリスクを回避するには、0.5単位の原資産を売買しておけばよいことになります。そこから、0.5単位のことをΔ(デルタ)、または最適ヘッジ比率と呼んでいます。最適ヘッジ比率は、オプションを原資産に置き換える場合の原資産相当額への換算率を示しています。
※デルタは微小の変化量を表わす記号ですが、オプションの方程式では最適ヘッジ比率を示しています。
このように、収益率が変動する危険資産を同じ危険資産でヘッジすると、リスクが相殺されて安全資産として扱えるところを利用して、連立方程式を作っています。
しかし、リスクのない状態にあるのはごく短期間の間だけなので、原資産価格の変動に合わせて最適ヘッジ比率を繰り返し計算する必要があります。
この方程式を繰り返し解くという計算は、満期日から順次、現在にさかのぼる形で計算されます。
◆方程式の意味
「ΔS-C=(1+rt)B」は、金利を0と仮定すると、「ΔS-C=B」となります。この計算式は、何を求めようとするかによって3通りの見方ができます。
おことわり
ここでは、説明の便宜上、「オプション価値」と「オプション価格」という用語の使い分けをせず、すべて「オプション価格」に統一して表記しています。
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