特別講座 経済の捉え方 GDPと雇用
講師:有馬秀次
1.経済とは?
私たちは、モノを生産し、それを消費することで、生活しています。
この「ヒトによる、モノの生産と消費の活動」を経済といいます。
モノを生産する生産者は「企業」で、モノを消費する消費者は「家計」です。
両者の視点で、経済を捉えてみましょう。
2.企業(生産者)の視点
企業がモノを生産するのは、モノの売り買いで利益を得るためです。
より多くの利益を得るために、企業は、生産物を「より高い価格」で、「より多く販売(取引量)」することを目的として、活動しています。
生産物がすべて売り切れると仮定すると、総生産額(生産したモノの総額)と、総取引額(売ったモノの総額)は一致します。
国全体の関心事は?
一国全体の経済を企業側の視点で捉えると、「GDPの最大化」が最大の関心事です。
GDPとは、一国の全企業の利益を合計したもので、最終生産物の総取引額のことです。
最終生産物とは、私たちが消費するモノのことです。原材料は中間生産物で、GDPには含まれません。
例えば、お店で買ったケーキは最終生産物で、そのケーキの原材料(小麦粉、砂糖、卵など)は中間生産物になります。
3.家計(消費者)の視点
家計がモノを消費するのは、自分の好みのモノを購入することで、満足感を得るためです。
モノを購入するには、お金が必要です。家計は、企業で働いて(労働力を売って)賃金を得る、という生活をしています。
家計は、より多くの満足感を得るために、「より高い賃金」で、「より多くの仕事(労働量)」をすることを目的として、活動しています。
家計の関心事は、好きな仕事に就いて(見つけて)、高い給与(賃金)がもらえる生活を送ることです。
この満足感のことを「効用」といいます。
家計は、「効用の最大化」を目的として行動します。
国全体の関心事は?
一国全体の経済を家計側の視点で捉えると、「完全雇用の実現」が最大の関心事です。
完全雇用とは、働きたい人が全員、就業できることです。
4.経済の目標
経済の目標は、家計・企業の双方の視点からみて、理想的な姿であることです。
家計の視点からみた経済の理想的な姿とは、「完全雇用の実現」です。
それは、国民全員に、働く意思の有無や、職業選択の自由が与えられ、生活に必要な所得が得られるしくみがある社会です。
一方、企業の視点からみた経済の理想的な姿とは、「総利益の最大化(完全雇用GDPの達成)」です。
完全雇用が実現しているときのGDPのことを「完全雇用GDP」といいます。企業の総利益(GDP)は、完全雇用が実現しているときに、最も大きくなります。
完全雇用GDPは、完全雇用での労働力を使って生産される、最終生産物の総取引額のことです。
経済を短期(1年間)で捉える場合には、一国の最適な経済規模を表す指標である、完全雇用GDPの達成を目指します。