金融のセーフティネット
あなたの財産は守られている?
もし、金融機関が破たんしたら…
あなたの預金は? 株式は? 保険は?
いったい、どうなってしまうのでしょうか。
この講座では、「あなたの大切な財産(金融商品)がどこまで守られるか」をわかりやすく解説していきます。
1.金融商品とは?
わたしたちは、財産を「預金、株式、保険」といった金融商品で保有しています。
預金は、銀行が提供する金融商品です。
株式は、証券会社が提供する金融商品です。
保険は、保険会社が提供する金融商品です。
金融商品は、お金の貸し借りを証明する証文のようなものです。
金融機関が金融商品の売り手で、わたしたち(個人)が金融商品の買い手です。
預金は、銀行(売り手)に、預金者(買い手)がお金を預ける(=お金を貸し付ける)ものです。
株式は、企業(売り手)に、投資家(買い手)がお金を投資するものです。
※証券会社は、売り手ではありません。売り手と買い手の仲介をしているだけです。
2.信用が大切
お金の貸し借りには、「信用」が重要です。
預金の場合、「この銀行なら大切なお金を預けてもだいじょうぶ」と銀行を信用して、預金しています。
株式の場合、「この企業なら業績も上がって成長するだろう」と会社を信用して、投資しています。
また、投資信託、保険、外国証拠金取引などは、当該金融機関を信用して運用しています。
もし、金融機関が破たんしてしまったら、「預金や投資」という形で貸していたお金が返してもらえなくなるかもしれません。
このように、貸した相手からお金を返してもらえないというリスク(損害を受ける危険性)のことを信用リスクといいます。
預金の信用リスクは、銀行が負っています。
銀行の信用度が高ければ、預金は金融商品の中でもっとも安全な商品といえます。信用の高い銀行とは、不良債権が少なく、自己資本が大きい銀行のことです。
株式の信用リスクは、株式の発行会社だけではなく、証券会社にもあります。
したがって、証券会社の信用度を見定めることも大切です。
3.金融商品の保護
金融機関が破たんした場合、金融商品のセーフティネットとなる機構がわたしたちの財産を保護してくれます。
しかし、すべての金融商品が100%保護されるわけではありません。
保護対象外の金融商品もあるので、注意が必要です。
それでは、各金融商品ごとにみてみましょう。
«預金»
預金は、預金保険機構によって、1金融機関ごとに、元本1000万円とその利息までが保護されています(決済用預金は全額保護)。
ただし、外貨預金、譲渡性預金など一部の預金には、預金保険機構の保護が適用されていません。保護対象外の預金は、破たんした金融機関の財産に応じて支払われるため、減額される可能性があります。
«株式»
株式は、分別保管によって保護されているため、投資家の請求によって返還されます。ただし、破たんした証券会社が発行した有価証券(株式や社債)は保護されません。
証券会社の違法行為によって分別保管がされていなかった場合や、破たん時の混乱やトラブルなどにより、投資家の資産(有価証券やお金)の返還が適切に行われない場合には、日本投資者保護基金が1人当たり上限1000万円までの損失を補償します。
分別保管(分別管理)とは、証券会社が投資家から預かった資産(有価証券やお金)を、証券会社の資産と明確に区別して保管するという制度です。
証券会社が破たんした場合に投資家の資産を保護するために、1999(平成11)年4月から、証券会社に分別保管が義務付けられています。
«投資信託»
投資信託には、証券会社の販売するものと銀行が販売するものがあります。
証券会社が販売する投資信託は、日本投資者保護基金によって保護されています。
一方、銀行が販売する投資信託には、セーフティネットは用意されていません。
«保険»
保険は、保険契約者保護機構が保護します。保険契約者保護機構には、生命保険契約者保護機構と損害保険契約者保護機構の2つがあり、すべての保険会社は該当する機構に加入しています。
生命保険
全ての保険契約において、責任準備金の90%を補償します。
損害保険
自動車保険、火災保険などは、破たん後3ヶ月間は保険金を全額支払い(補償割合100%)、3ヶ月を過ぎたら補償割合80%となります。
医療保険、介護保険などの保険契約は、補償割合90%となります。
自賠責保険、地震保険などは補償割合100%となります。
ただし、保険契約を救済保険会社に引き継ぐときに、予定利率(生命保険の契約時に約束する運用利回り)が引き下げられたり、責任準備金が削減されたりする可能性もあります。保険金が減額されることも覚悟しなければなりません。
責任準備金とは、保険会社が保険契約者が払い込んだ保険料を、将来の支払い(解約返礼金、満期返戻金等)のために積み立てているものです。
«FX»
FXは、先物取引に似た性格の商品で、外国証拠金取引と呼ばれています。
FXには、セーフティネットは用意されていません。
※郵便貯金も預金と同じく、預金保険機構によって元本1000万円とその利息まで保護されています。ただし、郵政民営化前に契約した「定期性の郵便貯金」や「簡易生命保険」については、契約が消滅するまで政府保証が継続されます。
問題と解答
- お金の貸し借りにおいて、重要なことは何か。
(1)協調 (2)信用
- 貸した相手からお金を返してもらえないというリスク(損害を受ける危険性)のことを何というか。
(1)信用リスク (2)市場リスク
- 預金の信用リスクを負っているのはどの金融機関か。
(1)銀行 (2)証券会社
- 不良債権が少なく、自己資本が大きい銀行は信用が高いか低いか。
(1)低い (2)高い
- 預金は、預金保険機構によって、1金融機関ごとにいくらまで保護されているか。
(1)元本100万円とその利息まで (2)元本1000万円とその利息まで
- 外貨預金は保護されているか。
(1)保護されている (2)保護されていない
- 証券会社が投資家から預かった資産を、証券会社の資産と明確に区別して保管することを何というか。
(1)資産保護 (2)分別保管
- 投資信託で、日本投資者保護基金によって保護されるのは、どの金融機関が販売したものか。
(1)証券会社 (2)銀行
- 生命保険は、生命保険契約者保護機構によって、責任準備金の何%が補償されているか。
(1)80% (2)90%
- FX(外国証拠金取引)は保護されているか。
(1)保護されていない (2)保護されている
(答え)(2)信用
(答え)(1)信用リスク
(答え)(1)銀行
(答え)(2)高い
(答え)(2)元本1000万円とその利息まで
(答え)(2)保護されていない
(答え)(2)分別保管
(答え)(1)証券会社
(答え)(2)90%
(答え)(1)保護されていない