経済ってなあに?
講師:有馬秀次
「経済ってなあに?」と聞かれたら、答えられますか?
実は、経済という言葉には、広い意味があるのです。経済という言葉が使われている場面に応じて、意味を捉えることが重要です。
経済を初めて学ばれる方は、この講座で「経済」の意味を理解しておきましょう。
「経済」の捉え方
①企業の視点 経済=生産
②家計の視点 経済=消費
③語源の視点 経済=収支のやりくり
④モノの流れの視点 経済=生産と消費の循環活動
⑤経済理論の視点 経済=取引
このほかにも、いろいろな捉え方があるかもしれません。みなさんも考えてみましょう。
1.企業の視点 経済=生産
わたしたちは、働いて得た収入をもとにして、一戸建てやマンションなどに住み、学校で勉強したり、旅行や買い物、スポーツなどを楽しんだり…という暮らしを送っています。
暮らしには、衣食住を満たすためのモノ(生産物)が必要です。モノの生産に従事する部門を企業といいます。
モノを生産するということは、付加価値(新たな価値)を生み出す活動です。これを経済と捉えます。
1年間に国内で生産されたモノ(生産物)の総額を国内総生産(GDP)といいます。
GDPは、一国の経済規模をあらわします。2007年の日本のGDPは、約500兆円です。
2.家計の視点 経済=消費
モノを消費する部門を家計といいます。家計とは、わたしたちの家庭を全部集めた総称です。
消費とは、お金を使ってモノを買うことです。この消費活動を経済と捉えます。
企業がモノを生産するのは、家計に消費してもらうためです。したがって、企業は、家計の消費需要に応じて生産する必要があります。
消費が増える(モノがたくさん売れる)と、企業の業績がよくなります。
すると、企業はモノをたくさん生産するために、設備投資を増やしたり、雇用を増やしたりするので、国全体の経済が活発になります。
3.語源の視点 経済=収支のやりくり
経済という言葉は、中国の古典(隋代の王通『文中子』)にみられる「経世済民」の記述が語源と考えられています。
経世済民または経国済民には、「世を治め、民を救う」という意味があります。この言葉には、政治的な意味合いが読み取れます。
一方、Economyは、「家政」を意味するギリシャ語が語源となっています。
家政には、「家を治める」という意味や、お金を上手にやりくりする「節約」という意味があります。
どちらの言葉にも、「収支のやりくり」という視点があることがわかります。
4.モノの流れの視点 経済=生産と消費の循環活動
経済(わたしたちの暮らし)は、衣食住に必要なモノを生産し、それらを消費するという活動を繰り返しています。
この生産と消費の循環活動では、企業と家計の間で、モノと労働が流れています。
企業は、家計から労働者を雇って、モノを生産して、家計に販売しています。
このとき、モノは、企業から家計に流れていきます。
一方、労働は、家計から企業に流れていきます。
企業と家計の間では、モノは企業から家計に提供され、労働は家計から企業に提供されます。
これは、生産と消費の循環活動に伴い、企業のモノと家計の労働が交換されていると考えられます。
5.経済理論の視点 経済=取引
生産と消費の循環活動において、企業と家計は、モノと労働を直接交換しているわけではありません。
モノとお金(代金)、労働とお金(賃金)というように、お金を媒介にしています。
このモノや労働をお金と交換することを取引といいます。
取引は、売り手と買い手が「ある価格」で交換に合意することで成立します。
取引が成立すると、価格と取引量が決まります。
経済の状態は取引で捉える
経済活動が活発になると取引量が増え、経済活動が沈滞すると取引量が減ります。したがって、経済の状態は、取引の大きさで捉えられます。
取引の役割
わたしたちの暮らしは、取引によって、成り立っています。
家計が、労働をお金と交換(取引)すると、たくさんの労働者が働いて、みんなで分担してモノをつくる分業を行うことができます。分業は、生産の効率を高めて、大量生産を可能にしました。
企業が、モノをお金と交換(取引)すると、大量生産されたモノが円滑に流れるようになり、生産者と遠く離れた人々にも届けられます。
このように、取引は、モノを社会の隅々にまで分配する役割を果たしています。
市場メカニズムは経済のしくみ
取引を行う場のことを市場といいます。市場では、売り手と買い手が合意する価格で取引が行われます。
価格が高いと、買い手が減るため、取引量が減ります。逆に、価格が安いと、買い手が増えるため、取引量が増えます。
市場では、価格が変わることで、取引量が自動的に調整されます。これを市場メカニズムといいます。
経済=取引と考えると、経済学以外の学問も捉えやすくなります。
たとえば、会計学は、「取引の記録方法」についての研究と考えると、経済とつながっていることがわかります。
問題と解答
- モノの生産に従事する部門を( )といい、モノを消費する部門を家計といいます。
(1)企業 (2)政府
- 1年間に国内で生産されたモノ(生産物)の総額を( )といいます。
(1)国民総生産(GNP) (2)国内総生産(GDP)
- 2007年の日本のGDPは、約( )兆円です。
(1)500 (2)800
- 消費が( )と、企業は設備投資を増やしたり、雇用を増やしたりするので、国全体の経済が活発になります。
(1)増える (2)減る
- モノとお金(代金)、労働とお金(賃金)を交換することを( )といいます。
(1)分業 (2)取引
- 取引が成立すると、価格と( )が決まります。
(1)生産量 (2)取引量
- 取引は、モノを社会の隅々にまで( )する役割を果たしています。
(1)分配 (2)分業
- 市場では、売り手と買い手が合意する( )で取引が行われます。
(1)価格 (2)数量
- 市場では、価格が高いと取引量が減り、価格が安いと取引量が( )ます。
(1)減り (2)増え
- 市場では、価格が変わることで、取引量が自動的に調整されます。これを( )といいます。
(1)市場メカニズム (2)取引
(答え)(1)企業
(答え)(2)国内総生産(GDP)
(答え)(1)500
(答え)(1)増える
(答え)(2)取引
(答え)(2)取引量
(答え)(1)分配
(答え)(1)価格
(答え)(2)増え
(答え)(1)市場メカニズム