オプション取引入門講座 第2回 オプション損益
講師:有馬秀次
1.オプション損益
商取引において、損益は、「買い」と「売り」がセットになって生まれてきます。商品を安く買って高く売れば利益が生まれます。逆に、高く買って安く売れば損失が生じます。この損益は、はじめに行った「買う」という取引と、「売る」という反対取引がセットになって生まれます。
オプション取引の損益も、反対取引が行われて確定します。外国為替のドルコールオプションの損益を確定する場合を例にして考えてみましょう。
≪オプション取引の損益≫
行使価格1ドル=100円、プレミアム(権利料)1円の米ドルを買うことができる権利を持っているとします。このオプションの保有者は、外国為替レートがいくらになっても、1ドル=100円でオプションの売り手からドルを買うことができます。
外国為替市場で、ドルの価格が1ドル=150円に値上がりしても、オプションの権利を実行すると1ドルを100円で買うことができます。このようにオプションを実行することを、オプションを行使するといいます。オプションを行使すると、手元から100円がなくなり1ドルが手に入ってきます。これを外国為替市場へ持っていって150円で売却すると、初めて50円の利益が生み出されます。当初、プレミアム1円を払っているので、最終利益は49円となります。
※実際の取引では、市場でドルを売買する場合、売値と買値が開いているため、最終利益はもっと少なくなります。説明を簡単にするため、手数料計算は省略しています。
逆に、ドルの市場価格が100円より下落した場合には、オプションを放棄します。外国為替市場(銀行)に行けば100円より安くドルが買えるので、オプションの権利を行使してドルを買う必要はないというわけです。当初、オプションを購入するためにプレミアム1円を払っているので、オプションを放棄した場合には1円の損失となります。
オプションを持っていると、ドルが行使価格の100円より値上がりすれば、利益が生じます。逆に、どんなにドルが値下がりしても、損失はプレミアムの1円に限定されるのです。
≪オプション損益の確定≫
外国為替オプションのような相対(あいたい)取引のオプションでは、オプションを行使しても、損益を確定できるわけではありません。別途、市場で反対取引をして初めて損益を確定できるのです。
一方、取引所オプションの場合には、差金決済(さきんけっさい)のシステムが取引に組み込まれているので、オプション取引のみで損益が確定します。
取引所オプションで先物オプションを行使すると、先物の予約取引に振りかわり、その先物は反対取引で決済されて損益が確定します。
オプションの損益を確定する他の方法として、オプションをそのまま売却する方法があります。
先例で為替レートが150円になっていた場合、オプションを実行すると50円の利益を生み出します。そのオプションは50円の価値があるので、オプションの権利自体を50円で売ることも可能です。当初1円で買ったプレミアムを50円で売ると、49円の利益が出ます。これは、オプションの満期まである程度の期間が残っているときに採られる方法です。
2.オプションと流動性
相対取引のオプションの損益は、オプションを行使したのち、現物市場で反対取引をしてはじめて確定します。もし、市場でその商品を売ることができなければ、オプションの損益を確定できません。オプションで損益を確定するためには、市場で「反対取引」ができなくてはなりません。
投資目的でオプションを買う場合、市場でいつでも売れるという条件が必要です。つまり、オプション取引には、現物市場(げんぶつしじょう)に流動性があることが必要です。
3.オプションの利点
オプションと先物の損益を比較すると、オプションの方がプレミアム分だけ損益が劣っていることがわかります。将来への見通しが確実なら、先物で投資する方がよいのです。
オプションは、将来への見通しが不確実な場合に、損失を限定し、機会利益を追求するという取引です。
≪オプション取引と先渡予約の損益の比較≫
参考 : オプション損益
【用語解説】
◆現物取引
外国為替、債券、株式などの取引のことをいいます。現時点で取引されるものです。例えば、株式を購入すると、株券という財産を手に入れることができます。一方、オプションは、将来の時点で取引が起こるので、現物ではありません。
◆原資産(げんしさん)
オプションの対象となっている為替、債券、株式などの金融商品のことをいいます。
◆相対取引(あいたいとりひき)
売り手1人に買い手1人の取引のことをいいます。取引条件が自由に決められる取引です。別名、店頭取引(てんとうとりひき)ともいいます。
◆取引所取引
取引所で行う集団取引のことをいいます。上場取引(じょうじょうとりひき)ともいいます。
まとめ
相対取引のオプション
市場で反対取引をして、初めて損益が確定する
現物市場に流動性があることが必要
取引所オプション
差金決済のシステムが組み込まれているため、オプション取引のみで損益が確定する
問題と解答
- 商取引の損益は●うという取引と、売るという反対取引がセットになっています。オプション取引の損益も、●●取引が行われて確定します。
- 行使価格1ドル=100円、●●●アム(権利料)1円の米ドルを買う権利を持っているとします。このオプションの保有者は、外国為替レートがいくらになっても、1ドル=●●●円でオプションの売り手からドルを買うことができます。
- 外国為替市場でドルの価格が1ドル=150円に値上がりしても、オプションの権利を実行すると1ドルを●●●円で買うことができます。このように、オプションを実行することを「オプションを●●する」といいます。
- オプションを●●して1ドルを買い、外国為替市場で150円で売却すると、初めて50円の利益が生み出されます。当初、プレミアム1円を払っているので、最終利益は●●円となります。
- 市場価格がどんなに値下がりしても、オプションを●●すれば、損失はプレミ●●料に限定することができます。
- 相対取引のオプションの損益は、オプションを行使したのち、現物市場で●●取引をして初めて確定します。オプション取引には、市場でいつでも売れるという、●●性があることが必要です。
- ●●所オプションでは、●●決済のシステムが取引に組み込まれているため、オプション取引のみで損益が確定します。
- オプションの損益を確定する他の方法として、オプションをそのまま●●する方法があります。これは、オプションの●●まである程度の期間が残っているときに採られる方法です。
- オプションと先物の損益を比較すると、オプションの方が●●●アム分だけ損益が劣っています。オプションは、将来への見通しが不確実な場合に、●●を限定し、機会利益を追求するという取引です。
- 外国為替、債券、株式などの、現時点で取引されるものを、●●取引といいます。●●ションは、将来の時点で取引が起こるので、現物ではありません。
(答え)買、反対
(答え)プレミ、100
(答え)100、行使
(答え)行使、49
(答え)放棄、アム
(答え)反対、流動
(答え)取引、差金
(答え)売却、満期
(答え)プレミ、損失
(答え)現物、オプ