債券取引入門講座 第2回 債券の種類
1.債券の種類
債券は、発行者が誰であるかから公共債、民間債、外国債に分けられます。
公共債は、国や地方公共団体が発行する債券で、(1)国が発行する国債、(2)地方公共団体(都道府県市)が発行する地方債、(3)公団・公庫・営団などの政府関係機関が発行する政府保証債に分けられます。
民間債は、民間の株式会社が発行する債券です。債券の総称として、「公社債」という言葉も使われます。
民間債には、一般の株式会社が発行する社債と、特定の銀行と金庫が発行する金融債があります。社債のことを、一般に事業債といいます。
外国債は、外国政府や法人が発行する債券で、略して外債と呼んでいます。外国債には、(1)外貨建て外債、(2)円貨建て外債、(3)二重通貨建て外債があります。
2.公共債
≪国債≫
国債は、国が発行する債券です。元利金の支払いを国が保証する、最も信用度の高い安全な債券です。銀行、信用金庫、証券会社、保険会社、郵便局などの金融機関で購入することができます。
◆償還期限による分類
国債には、償還期限の期間別に、超長期国債(30年、20年、15年)、長期国債(10年)、中期国債(6年、5年、4年、3年、2年)、短期国債(1年以内)の4種類があります。長期国債は毎月発行され、発行量と流通量が多いのが特徴です。
中期国債
1999年5月6日に、政府・自民党は、4年物利付債と6年物利付債を統合して、5年物利付債を発行する方針を決めました。
短期国債
短期国債は、償還期限1年以内の債券です。割引短期国債(TB)と政府短期証券(FB)がありますが、購入できるのは、入札参加資格を持つ金融機関などに限られています。
短期国債は、借換債(満期が到来する国債の償還のために発行される債券)の発行が行われるまでの間の資金繰りに発行される債券です。昭和60年度以降、国債が大量に償還されることに対応して発行されるようになりました。
◆利付債と割引債
国債には、利付債と割引債があります。発行時に一定の利札(クーポン)が付いているものと、利札が付いていないものがあります。付いているものを利付国債、付いていないものを割引国債といいます。
利付債
利付債は、3年物の中期国債を除いた中長期国債です。年2回の利息と、償還時には額面金額が支払われます。
割引債
割引国債は、発行時に利息分を割り引いて発行し、償還時に額面金額が支払われる債券です。利札はありません。割引債には、3年物の中期国債と短期国債があります。
◆国債の額面
国債は最低額面が5万円なので、5万円から購入できます。購入限度額はありません。国債には、この他に、10万円券、100万円券、1000万円券、1億円券、10億円券の計6種類があります。
2001年12月6日、財務省は、最低額面1万円の個人向け国債(満期10年、変動金利)を、2003年1月に発行する計画であると発表しました。
個人が購入しやすいように、最低額面5万円(固定金利)を、最低額面1万円(変動金利)に引き下げています。
日本の国債の個人保有割合が欧米諸国に比べて低いことから、最低額面を引き下げて、国債の個人保有の増加をはかります。
ただし、満期前に売却・換金する場合には、国が額面で買い取ります。
通常の国債のように、市場で時価で売却することはできません。満期まで保有することを原則とした国債です。
◆発行目的による分類
国債は、調達した資金を何に使うかで(1)建設国債、(2)特例国債(赤字国債)、(3)年金特例国債、(4)復興国債、(5)財政投融資特別会計国債(財投債)、(6)借換国債 に分類されます。
建設国債は、公共事業に充てるために発行されます。
特例国債(赤字国債)は、一時的な税収の不足(一般会計の歳入不足)を補うために発行されます。
年金特例国債は、基礎年金の国庫負担分(2分の1)を賄うために、将来の消費税増税により得られる収入を償還財源として発行されます。
(将来に得られる収入を償還財源として発行される国債のことを「つなぎ国債」といいます。)
復興国債は、東日本大震災の復興財源に充てるために発行されます。
財政投融資特別会計国債(財投債)は、特殊法人に融資するために発行されます。
借換国債は、既存の国債を返済(償還)するために発行されます。
◆政府短期証券
政府短期証券は、期間3ヶ月(13週間)の割引債です。一般にFBと呼んでいます。国庫の一時的な資金不足を解消するために発行されるものです。大蔵省証券・食糧証券・外国為替資金証券の3種類が発行されていましたが、1999年4月に、政府短期証券として統合されています。
参考 : 国債
≪地方債≫
地方公共団体が発行する債券です。道路、水道、病院などの建設を行う財源をまかなうために発行する債券です。
≪政府保証債≫
日本道路公団、関西国際空港株式会社などの公団、及び政府出資の特殊会社が発行する債券です。道路債券、関西国際空港債券などがあります。政府が債券の元利金の支払いを保証しています。
3.民間債
≪金融債≫
金融債は、日本興業銀行や商工組合中央金庫などの特定の金融機関が発行する債券です。調達した資金は、いろいろな企業の長期資金の貸付に使われます。
◆利付金融債と割引金融債
金融債は、発行方法により(1)利付金融債、(2)割引金融債 の2つに分けられます。
利付金融債
利付金融債は、利札(クーポン)が付いている債券です。償還期限は3年か5年で、半年ごとに利息が支払われます。
割引金融債
割引金融債は、償還期限1年の債券です。発行時に1年間の利息相当分を額面金額から割り引いて発行し、1年後に額面金額を返済します。これを、割引発行といいます。「割引債」、あるいは「ワリサイ」と呼んでいます。
各金融債には、発行銀行がわかる愛称が付いています。例えば、みずほ銀行・みずほコーポレート銀行(旧 日本興業銀行)の発行する債券には、リッキー(利付金融債)、ワリコー(割引興業債券)という呼び名があります。金融債は、主に個人投資家によって購入されています。
参考 : 金融債
≪社債(事業債)≫
社債は、株式会社が発行する債券です。一流事業会社の発行する債券であることから、事業債とも呼んでいます。これまでに500社にも及ぶ会社が社債を発行しています。社債は、担保の有無によって、「担保付社債」と「無担保社債」に分類されます。
社債を発行するためには、資産内容・収益性等の財務状況が優れていることが必要です。社債は、その信用度の目安として、格付機関によって格付け(ランク)されています。格付けにより、利回りに若干の違いがあります。
なお、一部の事業債は、電力債とNTT債といった呼び方をします。電力債は、全国9電力会社の発行する債券です。事業債は、個々の発行会社の名前を使ってNTT債、東京電力債、新日鉄社債、三菱電機転換社債・JR債、電力債などと呼ぶ場合もあります。
この他、外国政府や法人が発行する債券を外国債といいます。外国債のことを、略して外債と呼んでいます。
(1)転換社債
転換社債とは、株式に転換する権利(転換権)が付いた社債のことです。普通の社債として発行されますが、転換請求期間内に転換権を行使すれば、社債を株券に転換できる債券です。株式に転換すると、元の社債はなくなってしまいます。もちろん、株式に転換するのに追加の資金は要りません。
転換社債は、投資家にとてもお得な社債です。会社の株価が値上がりした場合には、株式に転換して売却すれば利益が得られます。株価が値下がりした場合には、社債のまま保有していれば、クーポンの支払いを受けることができます。満期日には、額面金額の元本が返ってきます。これは、銀行に定期預金をしているのと同じです。転換社債は、株式の投機性と社債の安全性とを兼ね合わせている債券なのです。一方、発行会社には、通常の社債より有利な条件で発行できるという長所があります。
(2)新株引受権付社債(ワラント付社債)
ワラント付社債とは、社債発行会社の新株の引受権が付いた社債です。ワラントとは、一定の値段(行使価格)で一定数の新株を発行してもらえる権利のことをいいます。転換社債と似ていますが、ワラント付社債の場合は、株式を取得するのに新たに購入資金が必要です。ワラントを行使すると、社債と株式の両方を持つことになります。
参考 : 社債
4.外国債
外国債は、外貨建て外債、円貨建て外債、二重通貨建て外債に分けることができます。
≪外貨建て外債≫
外貨建て外債は、払込み、利払い、償還が外貨で行われる債券です。外国の政府や法人が、日本国内で発行する外貨建て債券のことを、ショーグン・ボンドといいます。
≪円貨建て外債≫
円貨建て外債は、払込み、利払い、償還が円貨で行われる債券です。外国の政府や法人が、日本国内で発行する円貨建て債券のことを、サムライ・ボンドといいます。また、海外市場で発行された円貨建て債券のことをユーロ円債といいます。
≪二重通貨建て外債≫
二重通貨建て外債は、払込み・利払い・償還が、異なる2種類の通貨で行われる債券です。払込みと利払いの通貨が同じで、償還の通貨が異なるものをデュアル・カレンシー債(二重通貨建債)といいます。また、払込みと償還の通貨が同じで、利払いの通貨が異なるものをリバース・デュアル・カレンシー債(逆二重通貨建債)といいます。
まとめ
債券
公共債、民間債、外国債に分けられる
公共債
国債…国が発行する債券
地方債…地方公共団体が発行する債券
政府保証債…政府機関が発行する債券
民間債
社債…株式会社が発行する債券
金融債…特定の金融機関が発行する債券
外国債
外貨建て外債…払込み、利払い、償還が外貨で行われる債券
円貨建て外債…払込み、利払い、償還が円貨で行われる債券
二重通貨建て外債…払込み・利払い・償還が、異なる2種類の通貨で行われる債券
問題と解答
- ●●は、国が発行する債券です。元利金の支払いを国が保証する、最も信用度の高い安全な債券です。国債には、発行時に一定の利札が付いている●●国債と、利札がついていない●●国債があります。
- ●●国債は、発行時に利息分を割り引いて発行し、●●時に額面金額が支払われる債券です。利札はありません。
- ●●国債は、償還期限1年以内の債券です。満期が到来する国債の償還のため、●●債発行までの間の資金繰りに発行されます。
- 政府●●証券は期間3カ月の割引債です。一般に●●と呼んでいます。国庫の一時的な資金不足を解消するために発行されます。
- 国債は、調達した資金を何に使うかで、「●●国債」(公共事業に充てる)、「●●国債(赤字国債)」(一時的な税収不足を補う)、「年金特例国債」(基礎年金国庫負担分に充てる)「復興国債」(震災復興財源に充てる)、「財政投融資特別会計国債(財投債)」(特殊法人に融資する)、「●●国債」(既存の国債を返済する)に分類されます。
- ●●債は、道路などの建設を行う財源をまかなうために、地方公共団体が発行する債券です。●●●●債は、公団及び政府出資の特殊会社が発行する債券で、政府が債券の元利金の支払いを保証しています。
- ●●債は、特定の金融機関が発行する債券です。利札の付いている●●金融債と、利札の付いていない●●金融債があります。
- 社債は、株式会社が発行する債券で、●●債ともいいます。担保の有無によって、担保付社債と●●●社債に分類されます。一部の事業債は、電力債やNTT債といった呼び方をします。
- 転換社債とは、株式に転換する権利(●●権)が付いた社債です。転換請求期間内に●●権を行使すれば、社債を株券に転換できます。株式に転換すると、元の社債はなくなります。
- ワラント付社債とは、新株の●●権が付いた社債です。ワラントとは、一定の値段(行使価格)で一定数の新株を発行してもらえる権利のことです。ワ●●●を行使すると、社債と株式の両方を持つことになります。
(答え)国債、利付、割引
(答え)割引、償還
(答え)短期、借換
(答え)短期、FB
(答え)建設、特例、借換
(答え)地方、政府保証
(答え)金融、利付、割引
(答え)事業、無担保
(答え)転換、転換
(答え)引受、ラント