外国為替入門講座 第7回 外国為替相場
講師:有馬秀次
1.外国為替相場
外国為替相場(外国為替レート)とは、通貨の交換比率のことです。
≪為替レートの表示方法≫
外国為替相場には、自国通貨建てと外国通貨建ての2通りの表示方法があります。
外国通貨1単位に対して自国通貨がいくらになるかを表す方法を自国通貨建て(邦貨建て)といいます。米ドルと円の為替相場を、1米ドル=100円というように表します。1ドルを100円と交換できるということです。
一方、自国通貨1単位に対して外国通貨がいくらになるかを表す方法を外国通貨建て(外貨建て)といいます。ドル/円レートを外国通貨建てで表示すると、1円=0.01ドルとなります。市場では、より見やすくするために、100単位あたりで100円=1ドルのように表示します。ポンド/ドルの場合では、1ポンド=1.5128米ドルのように表示します。
一般に日本をはじめ、米国、スイスなどほとんどの主要国は、自国通貨建てを採用しています。英国、ユーロ、オーストラリア、ニュージーランドなどは外国通貨建てを採用しています。
「自国通貨建て」を「外国通貨建て」に換算するには、外貨を邦貨で割ります。
外貨÷邦貨=1ドル÷100円=0.01
1円=0.01ドルと換算されます
逆に、「外国通貨建て」を「自国通貨建て」に換算するには、邦貨を外貨で割ります。
邦貨÷外貨=1円÷0.01ドル=100円
あるいは、100円÷1ドル=100円
1ドル=100円と換算されます
≪クロス・レート≫
ある国から見た他の2通貨間の為替相場のことを、クロス・レートといいます。為替相場は、通常、米ドルを基準通貨として対米ドルで表示しています。これを基準相場と呼んでいます。
2つの基準相場から、基準相場にない為替レートを計算することができます。例えば、ポンド/円(£/¥)相場は、ドル/円($/¥)と ポンド/ドル(£/$)の基準相場から計算できます。これを裁定相場と呼んでいます。日本から見ると、ドル/ポンドがクロス・レートになりますが、ドルを基準にするとポンド/¥レートがクロス・レートになります。
(例1)
£1=$1.50(外貨建て)と、$1=¥100(邦貨建て)のレートから
£/¥レートを計算すると
£1=$1.50×¥100=¥150 となります
(例2)
US$1=C$1.4743(邦貨建て)と、US$1=¥106.57(邦貨建て)から
C$/¥レートを計算すると
C$1=¥106.57÷C$1.4743=¥72.29 となります
※カナダ・ドル(C$)は、邦貨建てで表示されています
2.「円高=ドル安」の意味
為替レートが1米ドル=120円から1米ドル=100円というように円貨の数字が小さくなる時、ドル安/円高になったといいます。これは、1ドルの商品価格が120円から100円に値下がりしたのと同じです。ドルの価値が下落したと考えられます。一方、円に着目すると、120円払わないと買えなかったものが100円で買えるようになったのです。余った20円で余分に他のものが買えます。つまり、円の価値が上がったと考えられます。
ドルの価格が下がったとは、円の価値が上がったことを示しています。したがって、円高=ドル安となることがわかります。
逆に、1ドル=120円から1ドル=150円というように円貨の数字が大きくなる時、ドル高/円安になったといいます。これは、1ドルの商品価格が120円から150円に値上がりしたのと同じです。ドルの価値が上昇したと考えられます。一方、円に着目すると、120円で買えたものが150円払わないと買えなくなったのです。1ドルを買うのに30円も余分にお金が必要です。つまり、円の価値が下がったと考えられます。
ドルの価値が上がったとは、円の価値が下がったことを示しています。したがって、円安=ドル高です。
3.相場の種類
外国為替レートは、取引されている市場の違いから、インターバンク・レート(銀行間相場)とカスタマーズ・レート(対顧客相場)に分けられます。
≪銀行間相場≫
銀行間相場(インターバンク・レート)とは、銀行間で形成される相場のことをいいます。商品の売買における「卸売価格」にあたるもので、為替取引の基準(ベース)となる相場です。銀行間相場は、1日中、需給に応じて絶えず変動しています。
一般に、市場レート(マーケット・レート)という場合には、銀行間相場を指します。銀行間相場には、為替の受渡日の違いから、直物為替相場(スポット・レート)と先物為替相場(フォワード・レート)があります。
◆(a)直物相場(スポット・レート)
為替取引が成立した2営業日後に、外貨とその対価の受渡しが行われる直物取引に適用される相場を、直物相場と呼んでいます。 この直物相場は、ビッド・レート(買いレート)とオファー・レート(売りレート)の双方で建て値されます。両建てで建て値することをツー・ウエイ・クォーテーションと呼んでいます。
(例)1ドルは、¥110.10-15 のように建て値されます。
110円10銭がビッド・レート、110円15銭がオファー・レートです。
建て値を提示した銀行から見て、「1ドルを110円10銭なら買います。
1ドルを110円15銭なら売ります。」ということを示しています。
通常、インターバンク取引では、このビッドとオファーの両方のレートを建て値することになっています。
◆(b)先物相場(フォワード・レート)
先物相場は、外国為替の予約レートです。将来の特定日または一定期間内に、為替の受渡しとその代り金の支払いを約束する先渡取引に適用される為替相場です。
一般に、相対で行われる予約取引を「先渡取引」、取引所で差金決済される予約取引を「先物取引」と呼んでいます。外国為替市場では、直物という言葉に対応させて先物という言葉を使っていますが、実際は、先渡のことを意味しています。
先物レートは、市場でそのままの形で取引されるわけではありません。市場では、直物レートと先物レートの差額が取引されています。この差のことを直・先スプレッド(直・先の開き)と呼んでいます。 先物レートは、直物レートに直・先スプレッドを加減して計算したものです。
先物レート=直物レート±直・先スプレッド
≪対顧客相場(カスタマーズ・レート)≫
一般の企業や個人が銀行との間で行う為替取引に適用される相場のことを、対顧客相場といいます。商品売買の「小売価格」にあたるものです。
対顧客相場の基準となる為替相場を仲値と呼びます。仲値は、銀行間直物相場をもとにして、午前10時頃に決められます。銀行は、原則として1日に1回対顧客相場を公示しています。
対顧客相場は、為替の種類により、電信為替相場、一覧払為替相場、期限付手形買相場などに分けられます。
相場には、売相場と買相場がありますが、「売り、買い」は、銀行側から見た場合の表示です。銀行が顧客に為替を売る場合を売相場、顧客から買う場合を買相場といいます。
◆電信売相場(TTS)
電信売相場(Telegraphic Transfer Selling rate)は、外国為替の支払いと代り金の受入れの間に、立替期間がない場合に適用されるレートです。顧客からの仕向け電信送金やインパクトローンの期日決済の取引に適用されます。
ドル/円の場合、仲値より1円高いレートです。仲値が$1=¥100とすると、TTSは$1=¥101となります。
◆電信買相場(TTB)
電信買相場(Telegraphic Transfer buying rate)は、外国為替の受取りと代り金の支払いの間に、立替期間がない場合に適用されるレートです。送金されてきた外貨を自国通貨に交換するときの被仕向送金や、取立済の輸出手形の支払いなどに適用されます。
ドル/円の場合、仲値より1円安いレートです。仲値が$1=¥100とすると、TTBは$1=¥99となります。
◆一覧払輸出手形決済相場(アクセプタンス)
一覧払輸入手形決済相場(アクセプタンス)は、信用状付手形を決済するときの相場です。銀行が為替を売るときのレートです。
信用状付手形は、一定の郵送(メール)日数分だけ、決済に時間がかかります。それまでは、資金の回収はできません。そこで、資金が回収されるまでの間、銀行が立替払いを行います。この間の立替金利をTTSレート(電信売り相場)に加えたものが、一覧払輸入手形決済相場です。
◆一覧払輸出手形買相場(アトサイト)
一覧払輸出手形買相場(アトサイト)は、信用状付一覧払輸出手形を決済するときの相場です。銀行が為替を買うときのレートです。
信用状付一覧払輸出手形は、一定の郵送(メール)日数分だけ、決済に時間がかかります。それまでは、資金の回収はできません。そこで、資金が回収されるまでの間、銀行が立替払いを行います。この間の立替金利をTTBレート(電信買い相場)から差し引いたものが、一覧払輸出手形買相場です。
◆期限付手形買相場(ユーザンス)
期限付手形買相場(ユーザンス)は、銀行が期限付き手形を買取るときに適用するレートです。
期限付き手形は、一定の郵送(メール)日数分とユーザンスの期間分、決済に時間がかかります。それまでは、資金の回収はできません。そこで、資金が回収されるまでの間、銀行が立替払いを行います。TTBレート(電信買い相場)から、メール期間金利と、ユーザンス期間金利を差し引いたものが、期限付手形買相場です。
まとめ
外国為替相場
通貨の交換比率
自国通貨建て…外国通貨1単位に対して自国通貨がいくらになるかを表す
外国通貨建て…自国通貨1単位に対して外国通貨がいくらになるかを表す
銀行間相場
銀行間で形成される相場
直物相場…直物取引(2営業日後に受渡し)に適用
先物相場…先渡取引(将来の特定日または一定期間内に受渡し)に適用
対顧客相場
企業や個人が、銀行との間で行う為替取引に適用される相場
電信売相場…外為の支払と代り金の受入れの間に、立替期間がない場合
電信買相場…外為の受取りと代り金の支払の間に、立替期間がない場合
一覧払輸入手形決済相場…海外で買い取られた信用状付一覧払手形を本邦で決済する時の相場
一覧払輸出手形買相場…銀行が信用状付一覧払いの外貨建輸出手形を買取る時の相場
期限付手形買相場…銀行が期限付き手形を買取る時の相場
問題と解答
- 外国通貨1単位に対して自国通貨がいくらになるかを表す方法を●●通建て(邦貨建て)といい、自国通貨1単位に対して外国通貨がいくらになるかを表す方法を●●通貨建て(外貨建て)といいます。
- 自国通貨建てを外国通貨建てに換算するには、外貨÷●●、外国通貨建てを自国通貨建てに換算するには、邦貨÷●●で計算します。
- 他の2通貨間の為替相場を●●●・レートといいます。為替相場は、米ドルを基準通貨として対米ドルで表示しています。これを●●相場といいます。2つの基準相場から基準相場にない為替レートを計算できます。これを●●相場といいます。
- 外国為替レートは、●●●ーバンク・レート(銀行間相場)と●●●マーズ・レート(対顧客相場)に分けられます。市場レート(●●●ット・レート)という場合には、銀行間相場を指します。
- 銀行間相場には、直物為替相場(●●●ト・レート)と先物為替相場(フォワード・レート)があります。直物相場は、●●●・レート(買いレート)とオファー・レート(売りレート)の双方で建て値されます。両建てで建て値することをツー・ウエイ・●●●テーションといいます。
- 先物相場は、将来の特定日または一定期間内に受渡しと支払を約束する●●取引に適用されます。市場では、直物レートと先物レートの差額が取引されます。この差のことを直・先●●●ッドといいます。
- ●●●相場(カスタマーズ・レート)は、企業や個人が銀行との間で行う為替取引に適用される相場です。対顧客相場の基準となる為替相場を●●といい、銀行間直物相場をもとに午前10時頃に決められます。
- ●●●相場(TTS)は、外国為替の支払と代り金の受け入れの間に立替期間がない場合に適用されます。●●●相場(TTB)は、外国為替の受取りと代り金の支払の間に立替期間がない場合に適用されます。
- 一覧払●●手形決済相場(アクセプタンス)は、電信為替売りレートに立替金利を加えたレートです。一覧払●●手形買相場(アトサイト)は、電信為替買レートから立替金利を差し引いたレートです。
- ●●付手形買相場(ユーザンス)は、銀行が期限付き手形を買取るときに適用するレートで、電信為替買レートから●●●期間金利とユーザンス期間金利を差し引いたレートです。
(答え)自国、外国
(答え)邦貨、外貨
(答え)クロス、基準、裁定
(答え)インタ、カスタ、マーケ
(答え)スポッ、ビッド、クォー
(答え)先渡、スプレ
(答え)対顧客、仲値
(答え)電信売、電信買
(答え)輸入、輸出
(答え)期限、メール