金融大学(金融大学講座)

外国為替入門講座 第6回 外国為替市場

1.外国為替市場

 

外国為替の売買が行われる場のことを、外国為替市場といいます。
外国為替市場は、2つに大別されます。銀行間で行われる取引市場と、銀行が対顧客を相手に行う取引市場です。前者をインターバンク市場(銀行間市場)、後者を対顧客市場と呼んでいます。通常、外国為替市場という場合、インターバンク市場を指します。

 

外国為替市場

 

現在の外国為替市場は、過去と比較して基本的な構造は維持されつつも、技術の進展により取引のあり方が大きく進化しています。外国為替市場は物理的な取引所を持たず、デジタル技術によってオンラインで運営される電子取引市場となっています。

 

外国為替市場は、シドニー、東京、香港、シンガポール、チューリッヒ、パリ、ロンドン、ニューヨークなどの世界各国の都市に存在している、24時間オープンの市場です。各市場の取引時間帯は、時差のため少しずつ重なって、ずれています。1日の最初の市場は、オーストラリアのシドニーに始まり、東京、香港、シンガポール、ロンドン、ニューヨークと地球をひとまわりします。

 

東京市場には、取引制限時間はありません。しかし、以前、取引時間が制限されていた頃の慣習で、午前9時から午後3時30分が東京市場の主要な取引時間帯となっています。

 

外国為替市場の1日の平均取引高は世界全体で約7兆5,084億ドルです(2022年BIS調査)。東京市場の1日の平均取引高は約4,785億ドルです(2024年日銀調査)。世界では、ロンドン、ニューヨークに次ぐ第3位の市場です。

 

外国為替市場は、主にインターバンク市場と対顧客市場の2つに大別されます。

 

 

 

2.インターバンク市場

 

インターバンク市場は、銀行間で取引が行われる市場であり、主要なプレーヤーは銀行、外国為替ブローカー、そして中央銀行などの通貨当局です。電子取引の普及により、リアルタイムで取引が行われることが一般的となり、透明性とスピードがさらに向上しています。

 

インターバンク取引は、銀行間同士で直接取引を行う直取引(ダイレクト・ディーリング)とブローカーを経由する取引から成り立っています。
直取引のメリットは手数料が不要な点で、比較的大きな額を一度に取引することが可能です。

 

≪取引の実際≫

 

◆直取引

 

直取引を行う場合、まず、A銀行がB銀行をスクリーン上に呼び出して、値(外国為替レート)を求めます。B銀行は、これに応えて建て値を提示します。建て値は、必ずビッド(買値)とオファー(売値)の両建てで行います。

 

A銀行が売りたければB銀行の提示したビッド(買値)の値で売り、A銀行が買いたければB銀行の提示したオファー(売値)の値で買います。

 

A銀行が、その建て値で取引することをB銀行に告げると、取引は成立します。B銀行は、取引の成立をA銀行に確認します。B銀行が提示した値が気に入らなければ、A銀行は取引に応じる必要はありません。

 

外国為替市場

 

◆為替ブローカーを介する取引

 

外為ブローカーを介して取引する場合、銀行は売買の注文(通貨の種類、希望取引金額、希望レート)をブローカーに提示します。この注文は、売りか買いのどちらか一方の注文です。ブローカーは、取引銀行から出された買値と売値の中で、最も高い買値最も安い売値を市場レートとします。そこで、売りたい銀行はブローカーが提示する買値で、買いたい銀行はその売値で取引を行います。取引相手の銀行名は、取引成立後はじめてブローカーから告げられます。

 

外国為替市場

 

≪取引参加者≫

 

◆銀行

 

東京市場には、邦銀と外銀を合わせて約280行の銀行が取引に参加しています(2024年時点)。これらの外国為替取引(外国為替業務や両替業務)を行う銀行を、外国為替公認銀行といいます。

 

これまで、外国為替取引は「外国為替及び外国貿易管理法(外為法)」によって、必ず外国為替公認銀行と行うように制限されていました。これを「為銀主義(ためぎんしゅぎ)」といいます。
しかし、1998年4月の外為法改正で為銀主義は撤廃され、外国為替取引は、企業間でも自由に行えるようになりました。

 

外国為替市場

 

銀行は、対顧客取引のカバー取引と、為替差益を狙った投機目的の売買(ディーリング)のために、外国為替取引を行います。

 

外国為替市場

 

銀行は、顧客との取引により外国為替ポジションが発生します。このポジションを調整するために、他の銀行と外国為替取引を行います。これが対顧客取引のカバー取引です。

 

ある企業が海外送金のために、A銀行から円を対価として100万ドル買ったとします。A銀行の外国為替ポジションは、100万ドルの売り持ち(ショート)になります。A銀行が為替リスクを持ちたくなければ、外国為替市場で反対取引(100万ドルの購入)をして、ポジションをスクェアー(ゼロ)にします。これがカバー取引です。

 

外国為替市場

 

相場の先行きに見通しがある場合には、銀行はポジションを保持することで、為替差益を狙います。

 

◆外国為替ブローカー

 

銀行間の外国為替取引を仲介する業務を行うものを、外国為替ブローカーといいます。ブローカーは、自ら為替ポジションをもつことはありません。ブローカーの収益は、外国為替取引仲介により、双方の銀行から受取る売買仲介手数料(ブローカレージ)です。
銀行がブローカーを利用するのは、銀行の都合の良いときにだけ売買を行えるからです。銀行は、ブローカーに対して建て値をする必要はありません。
ブローカー経由の取引は、インターバンクの市場取引の3割弱を占めています。しかし、電子ブローキングの発達により、ブローカー経由の取引の割合は減少傾向にあります。ブローカー会社には、東京フォレックス、メイタントラディション、上田ハロー等が知られています。

 

◆通貨当局

 

通貨当局とは、財務省(旧 大蔵省)及び日本銀行のことをいいます。
為替相場が乱高下すると、経済に悪影響を及ぼします。相場の乱高下を防ぐために市場に介入することをインターベンションといいます。

 

例えば、日本銀行が、100円以下の円高は好ましくないと判断したとします。すると日本銀行は、ドル買い円売り介入をして、ドルが100円を下らないようにします。

 

市場介入の資金は、外国為替資金特別会計で賄います。ドル売りであれば、外貨準備のドルを使います。ドル買いであれば、政府短期証券を発行して、円を調達して介入資金にあてます。
※政府短期証券(FB)は、国庫の一時的な資金不足を補うために政府が発行する短期国債です。

 

外国為替市場

 

 

 

3.対顧客市場

 

対顧客市場では、銀行が個人や企業を相手に取引を行います。この市場で提供される為替レートは、インターバンク市場でのレートを基準に設定されます。オンライン取引プラットフォームの進化により、個人投資家もリアルタイムの情報を基に取引を行うことができ、これにより取引の自由度が増し、取引量も増加しています。

 

このように、現代の外国為替市場は、デジタル化とグローバル化の進展により、より効率的でアクセスしやすいものへと変わりつつあります。

 

 

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まとめ

外国為替市場
  外国為替の売買が行われる場
  インターバンク市場(銀行間市場)…銀行間で行われる取引市場
  対顧客市場…銀行が対顧客を相手に行う取引市場
インターバンク市場
  銀行、外国為替ブローカー、通貨当局で構成される
  外国為替公認銀行…外国為替取引(外国為替業務や両替業務)を行う銀行
  外国為替ブローカー…銀行間の外為取引を仲介する業務を行うもの
  通貨当局…財務省(旧 大蔵省)及び日本銀行のこと

 

 

問題と解答
  1. 外国為替の売買が行われる場のことを外国為替市場といいます。外国為替市場は、●●●●バンク市場(銀行間市場)と、●●●市場の2つに大別されます。
  2. (答え)インター、対顧客

  3. 外国為替市場は物理的な取引所を持たず、デジタル技術によってオンラインで運営される●●●●市場となっています。
  4. (答え)電子取引

  5. インターバンク市場は、銀行、●●●●ブローカー、通貨当局で構成されています。インターバンク取引は、直取引(●●●クト・ディーリング)とブローカーを経由する取引から成り立っています。
  6. (答え)外国為替、ダイレ

  7. 直取引の場合、A銀行はB銀行を呼び出して値を求め、B銀行は建て値を提示します。建て値は、●●●(買値)と●●●●(売値)の両建てで行われます。
  8. (答え)ビッド、オファー

  9. 外為ブローカーを介して取引する場合、銀行は売買の注文をブローカーに提示します。ブローカーは、取引銀行から出された買値と売値の中で、最も高い●値と最も安い●値を市場レートとします。
  10. (答え)買、売

  11. 外為銀行は、外為ポジションの調整のために行う為替取引(対顧客取引の●●●取引)と、為替差益を狙った投機目的の売買(ディー●●●)のために、外為取引を行います。
  12. (答え)カバー、リング

  13. 銀行間の外為取引を仲介する業務を行うものを、外国為替●●●●●といいます。ブローカーは、自ら為替ポジションをもつことはなく、売買仲介●●●(ブローカレージ)を収益としています。
  14. (答え)ブローカー、手数料

  15. 銀行は、ブローカーに対して●●●をする必要はありません。
  16. (答え)建て値

  17. 相場の乱高下を防ぐために通貨当局が市場に介入することを●●●●ベンションといいます。市場介入の資金は、外国為替資金特別会計で賄っています。ドル売りであれば、外貨準備のドルを使い、ドル買いであれば、●●●●証券を発行して円を調達します。
  18. (答え)インター、政府短期

  19. 対顧客市場は、銀行が●●を相手に取引を行う市場です。対顧客レートは、●●ターバンク市場の外国為替レートに基づいて決めます。
  20. (答え)顧客、イン

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